本当はそれをずっと言ってほしかったのかもしれない。


桜はいつもどこかへ行ってしまいそうで、そんな桜を私がちゃんと掴んでいないといけないという、一種の義務感が生まれていた所もあった。


だけど、私たちの関係は崩れつつあって、自分がちゃんと分からなくなっていた。




「・・・・・・浅川?」


そう声をかけられ、ふと顔を上げると、二人は驚いた顔をした。


「川さん・・・・・・何で泣いてるの?」


玲菜はそう言って、私の頬に触れた。

涙をすくい取ってくれたようだ。


「その言葉を、待ってたの」


そして続けて、ありがとう、と言った。



「他の人をちゃんと見てみるのも、大事だしね」

「おいおい。
玲菜はやめてくれよ」

「え?んーどうだろ?
安心はしないでね」

「うっわ。
俺を少しは楽にさせてくれ」


そんな会話を聞いて、私の心は軽くなる。


「・・・・・・桜、大丈夫かな?
今までみたいに、接してくれるかな?」



二人の表情は、また少し曇った。


「んー。
桜のことは、あたし達に任せてよ。
大丈夫。ひょろっと、また声掛けてくれるから」


「そうそう。
あいつのことは、心配すんなって」


それからは、雑談で時間を過ごした。

少しだけ、桜を忘れられている気がした。