ためらいもなく言えたことが、昨日言えなかった。


それは、別に体調が悪かったとか、気分的問題ではなくて、多分それは相手が田上だったからだ。


認めたくないけど、認めざる負えない。


私は田上に、若干の好意を持っている。残念ながら。



今日の時間割はもう全て終わろうとしているのに、1度も桜と会話を交わしていない。


何度か勇気を出して試みてみた。


だけど、呆気なく、避けらられた。

そして、機嫌がMAXに悪いため、源や玲菜ならともかく、私のクラス全体に被害が及んでいる。


困ったものだ、全く。



「かーわーさんっ」

玲菜の明るい声が、5限目後の10分休みに、上から降ってきた。




「事情聴取してもいいか?」

源が横から言った。


「それは、どういうこと?」


「要約すると、次サボろうぜ」

話の内容は、大体分かる。

99%、昨日のことだ。


「私は構わないけど・・・・・・いいの?」


「大丈夫。俺ら、天才だから」

私は横目で桜を見た。

桜はこちらを見向きもしないで、窓から木々を見つめていた。


源と玲菜が歩きだしたので、私も慌てて、席を立った。



視線を感じたけど、あえて見なかった。

いや、怖くて見れなかった。