―――…で、お昼に行ってみたら…。
「…いないじゃん、誰も。」
その場所だけが冷たい風が吹いている気がした。
―――…帰ろ、やっぱ。
そう思ってドアに手をかけた瞬間、押してもいないのにドアが勝手に開いた。
「―――ひゃっ!」
あたしは思いがけず、体勢を崩してしまう。
倒れる、って思ったけど、それはあたしを受けとめた。
目をギュッと閉じていたあたしはそっとまぶたを開く。
――――あっ!
「うわっ!ゆ、幸島さんっ!…だ、だい…大丈夫?」
それは、柳田君だった。
「――――ごめんっ!重かったでしょ?」
あたしは急いで柳田君と距離をとった。
柳田君もあたしも、今日は暑いから顔が真っ赤なのかな…?!
「平気、全然重くなんてなかったよ。それより驚いて…」
柳田君は安心したような笑顔を見せた。
あたしも安心してしまうような、綺麗で飽きない笑顔だった。
柳田君はあたしの奥を覗いた。
「あれ?…みんなは?」
「あ、そうなの!誰もいなかったからあたし帰ろうとしてたところだったんだよ!」
「そっか…。」
柳田君の頬についた赤みはまだ消えていない。
あたしのも、消えていないのかな?
「…じゃあさ、俺と二人が嫌じゃなかったら一緒に飯食べてくれない?」
「え?」
「あ、ほ…ほら、たまには幸島さんと話がしたいな、って思ったからさっ!」