けいは細身ながら力がもとから強く、握力は人一倍強い。
そんなけいに何度も助けられたことがあった。
あたしは強いけいも知ってるけど、女らしい“けい”も知ってる。
高校一年の夏休み…―――。
けいはずっと好きだった男の子に想いを告げた。
顔を赤らめて、声も震えて…―――。
あんなけい…――――
初めて見た。
不安で…不安で…―――。
今にも壊れてしまいそうなけいを、その人は呆気なく突き放した。
―――けいは泣いていた。
見守ってくれてありがとう、と泣きながら笑っていた。
それを見るのが辛かった。
いい男なんてこの世にはたくさんいるよ、って言ったけど…――
『あの人以上に惚れてしまう人なんて、いないよ』
そう…、真剣な眼差しで答えた。
本当に好きだった。
ずっと好きだった。
その言葉からけいの全ての想いが伝わってくる。