「かおるっ!」
玄関のドアが開いた音と同時にあたしを呼ぶ声が聞こえた。
あら悠斗君じゃない、という母との会話も聞こえる。
「おじゃましますっ!」
悠斗は勢いよく階段を上がり、迷いもせずにあたしの部屋をガタンと開いた。
「ゆ…ゆうと…。」
――――初めてみた、悠斗の焦った顔。
「俺、ずっと考えてたんだ。俺、薫に嫌な思いさせてたよな?」
悠斗の目は今にも潤みそうで、足も心なしか震えているようにみえた。
そして、深々と頭を下げる。
「ごめん!ほんとごめんっ!」
「頭、上げてよゆうと…。」
そこまで言われると…。
「でもさ!薫を不安にさせてたと思うんだ!…違うか?」
頭を下げたまま、悠斗は叫ぶ。
「…それは多少、不安だったけど…―――。」
本音を、言ってみた。
悠斗は腰を折り曲げた状態で顔だけをこちらに向ける。
―――悔しそうな、申し訳なさそうな…
悠斗は唇を噛み締めて、その場に正座した。
「…俺は、薫が優しいことは知ってる。だから、柳田を心配するのもなんとなくだけどわかるんだ…。」
悠斗はあたしの目を見ないで、言葉を続ける。
―――ちゃんと、聞いてあげよう、って決めたから。
あたしは悠斗の目を逸らさずにじっと見る。
―――…人は、目に心が現れるって思ったから。

