「…そこらへん、座って。」
「うん。」
「…。」
「―――…」
沈黙が流れる。
―――…な、何から話せばいいのかな…?
そんなあたしたちの沈黙を破ったのは、第三者だった。
「はい!ケーキよ。」
母がいきなり来たのだ。
「ちょっとお母さん!ノックくらいしてよ!」
「なによ!いやらしいこととかしてないなら別にかまわないでしょ。」
「いや…、そう言われるとそうなんだけど…」
悠太はあたしたちのやりとりをただじっと見ていた。
「―――もう、どーでもいいからあっち行ってよっ!」
あたしは母の背中を押して、無理やり出ていかせた。
あたしは短くため息をついて母が出ていったドアを眺める。
―――…悠斗の話、最初から全部話そう。
あたしは自分自身に決意を固めた。
「あ、おいし。」
と、唐突に声が聞こえたものだからついつい間抜けな声をあげてしまった。
悠太は何が起こったのかわからない様子でこちらを唖然としながら見ている。
「あ、あはは…。」
なんとかこの空気を変えようとしたあたしの第一声。
「あ!タルトだったんだね!」
考えないで言ったため、そこにあったケーキを話題に引っ張った。
「あ、ああ。タルトだよ。」
悠太はそんなあたしを優しく見ながら微笑んだ。
「…あたしも食べよっ!」
あたしは悠太の相向いに座って、フォークを取った。

