あたしが離れようとした時、英介くんはあたしを抱き締めた。



「え、英介くんっ?!」



そして耳もとで囁くようにあたしに言う。



「…好きだ」





「大好きだ…」



「うん…」



「――――…大好きなんだよ」



「……」




あたしには『あたしもだよ』とは言えない。



今、一番一緒にいたいのは…―――――。




「…ありがと、薫」



離した英介くんはしっかりあたしを見ていた。



あたしには、その『ありがと』が
さっきのキスのことだったのか

今まで付き合っていたことだったのか


それとも両者を言っていたのかは、わからなかった。




「行って…」



不意に英介くんの呟きが聞こえた。



「今は、ひとりがいい…」



あたしには何もできないのだということを悟り、公園から走っていこうとした。



――――…あ、これだけは言わなきゃ…!



「ありがとう!」



――――…一体何のお礼だったのか、よくわからない。

でも、どうしても感謝の意を伝えたかった。



そして、あたしは今度こそ公園を離れたのだった。