―――カオル、スキダヨ…。



一回目は、薫に届かない覚悟で言ってみた。所詮、口パクごときが離れた薫にわかるとは思わなかったから。




―――スキダヨ、カオル…。



薫の表情を見て、もう一度言ってみようという思いに至った。

目を赤くして綺麗に落とすその雫に俺はまた惚れてしまったのだ。


その涙は俺の歌が感動できたから?


…驚いてる。


いや、俺も驚いたよ。

ここからでも案外見えてしまうものなんだな。



「…可愛いやつ」



そんな言葉がふっと出てしまった。



赤い目を丸くして俺の真意を問おうとしてる…。