「…あ!雨…。」
ふと、薫ちゃんは手のひらを空に向けた。
「本当だ。…確か、夕方頃に夕立があるって言ってたっけ?」
俺も薫ちゃんにつられて空を見た。
「そうなの?これ夕立?…じゃあ、強くなってくるよね。」
俺たちの歩調はだんだん早くなってきた。
――――そこに、ちょうど公園が見える…。
「あ、すぐ止むだろうからそこの東屋で雨宿りしようよ。」
――――…薫ちゃんともまだもっと話したいし。
そんな下心を持って誘うと、そうだね、と東屋まで走って行った。
――――雨の音は強くなり、屋根に打ちつける雨つぶが痛そうだ。
「夕立、…すごいね。」
話すことが見当たらないので、ずっとその雨を見ていた。
「すごいね…。」
ただなんとなくの会話が続く。
俺は気付かれないように、そっと横向きの薫ちゃんを見た。
彼女はこの雨脚を気にしている。
…そんなところが愛らしい。
思わず俺は、彼女の髪を撫でてしまっていた。
「…綺麗だ。」
そして思いがけず、発してしまった言葉…――――。
だか、それに偽りはない。
え、と驚いて薫ちゃんは自分の頭を確かめる。