薫ちゃんが俺の全てを好きというわけではないことは知っている。

俺も薫ちゃんもそれを了承して付き合っている。




――――しかし、かりそめではない。




きっと薫ちゃんは俺を好きになってくれると信じているから…。



そのために、俺は俺自身でいなきゃいけないんだ…――――。




「あ、悠太。」



薫ちゃんの声で俺は我に返った。


目の前には、薫ちゃんに微笑みかけている悠太君の姿があった。




「それ…―――――。薫、幸せそうだね。」




悠太君は繋がれた手を指差していった。



「…うん、幸せだよ!」



…気のせい?


薫ちゃんが若干悲しそうな声をした。




「悠斗の試合はどうだった?」



「あ!それがね!…―――――」



薫ちゃんは悠太君にさっきの試合を事細かに教えていた。



その顔は、今まで俺には出していない。


言葉じゃ言い表せない顔だった。