先生も満足したようで、誰も聞いていなかった昔話を終えると教室を出て行ってしまった。
「…薫、何の話か聞いてた?」
けいがおもしろそうに近藤先生を目で追いながら、あたしに尋ねてきた。
「いいえ、まったく…。」
「そうだよねー、薫ったら柳田君と仲良しこよしに話してたもんね。ラッブラブー。」
けいは口笛を鳴らしてあたしを冷やかした。
「なっ…」
恥ずかしくなって、あたしは手の甲を口元にあてた。
「べ、別にただ話しただけだもん!」
あたしなりに頑張った言い訳…――。
たしかに自分でも思うけど、英介くんと話している時の笑っている頻度が多い。
きっと、好きになり始めているのだと思う…。
「とにかくさ!今日は頑張ろっ!」
「そだね、うちはバスケで優勝取ってくるから!」
そう言うとけいは細身の腕についた力こぶを見せて体育館へと走っていった。
あたしはその背中を押すように、頑張ってね、と叫んだ。