「…俺も、悲しかったよ。そういうとき…―――」




あたしの顔を見ずに英介くんは呟いた。




「え?」




「俺が転校してくる前の学校で、幼なじみの女がいたよ。」




あたしは英介くんの瞳を覗く。


悲しそうな、目をしていた。




「…ま、そいつが俺の初恋の人なんだけどね。」



あたしの視線に気付いて、英介くんは笑ってみせた。

でも、その顔はとてもつらそう…―――。





「…その子が、あたしに似ていたの?」



英介くんはこくりと首を重そうに頷く。



「―――なんだろ…。雰囲気とか、性格とか…。でも、薫ちゃんはその子以上に俺を惚れさせる武器を持っていたんだ。」




「武器?!」



恥ずかしそうに顔を赤らめた英介くんは俯いて、あたしに聞こえるかどうかの境界で呟く。




「―――…笑顔。」



「あ、あたしに告白した時もなんか、そんなようなこと言ってたよね?」




「薫ちゃんの恥ずかしそうな笑顔、嬉しそうな笑顔、そしてなにより…―――」