からかわれてるのか話題を逸らそうと腕時計で時間を確認すると
「あと10分だ」
「じゃあ普通に歩いても大丈夫そうだね」
促された私は、ひとつ頷くと一緒に並んで歩き始めた。
「・・・」
「・・・片瀬さん。春の新入社員歓迎会の時、佐々木となんか話した?」
黙って歩いていた私に突然話をしてきた高橋さん。
「ううん。だって佐々木さんと飲み会の場で話すの今日が初めてだし」
佐々木さんっていう存在は知っていたものの、今まで特に接点もなく仕事上の連絡事項を電話で話したぐらいしかなかった私は、問いかけに対して首を横に振る。

