やんわりと彼の手を退けて顔を上げる。
「今日、涼に会わないで帰ろうって思ってたの」
絶対に泣かない。
「涼との想い出のこの場所を見るだけで帰ろうと思ってた」
気付かれてはいけない。
「さよならはそのままの意味だよ」
私は持てるだけの平常心で彼に笑いかけた。
「どうして?」
苦しそうに言葉を紡ぐ彼に私はただ微笑み続けた。
「もう・・・会わないでおこうって決めたの」
「会えなかったから?」
「ううん。まぁそれは引き金になったのはあるけど・・・でもそれだけじゃないの」
嘘は付きたくないから・・・
「・・・結婚が決まったの」
でも貴方が好き。

