「ホントに貴方って人は」
少し眉を潜める佐々木さんを見て、持っていた箸をテーブルに置いた。
「食べてください」とジョッキを持った佐々木さんは、ビールを飲み干すとグッと目を閉じ息を吐き出す。
『一度佐々木さんと話して欲しいんです』
由紀ちゃんに言われた言葉を思い出し、思わずシガレットケースに手を伸ばした。
「前川さんから聞いた?」
突然出てきた由紀ちゃんの名前と砕けた口調にびっくりして指にはさんだ煙草を落としそうになる。
「何をですか?」
取り繕うように答えると、佐々木さんは「まいったな」と頭を掻いた。
「カラオケの時。トイレで話を聞いたはずだけど」

