「片瀬さんと話してみたかったんですよね」
横に座り、「まぁどうぞ」と言いながら持っていたビールを私のコップに注いでくれる。
「私と話したいなんて珍しいし物好きですね」
持っていたビール瓶を受け取り、彼のコップにもビールを注いだ。
「俺、片瀬さんのファンなんですよ」
カチンとコップを合わせてから、同じタイミングでビールを流し込み、コップから口を離すと一言答えた。
「やっぱり物好きですよ」
持っていたコップをテーブルに置くと、灰皿に置いてあった吸いかけの煙草に手を伸ばす。
「俺も吸っていいですか?」
「どうぞ」
私の傍にあった灰皿をズイッと彼との間に持っていく。
横を向いてカチリとライターで火を付けた瞬間、釘づけになった。
綺麗に爪を切りそろえられていた。
そんなに白くはないけど、細くて長い指。
それは私が思い描いていた理想の手だった。

