この人、楽しんでない?
…意地が悪い。
私はムッと彼を睨んだ。
アランはそんな私を前に、首を傾げ肩をすくめると笑いながら言った。
「別に、昨日の平手打ちの仕返しとかじゃあないよ~?俺、基本ジェントルマンだし。」
いや、
絶対『仕返し』だって。
ワン!
『…バカ言ってないで助けろよ!馬鹿アラン!サイテー!鬼ッ!』
本当よね。
コンちゃん良い子っ。
私が強風に一人耐えながら、コンちゃんに同調していると、アランは急に…
声色を変えた。
「…ハルカ、ちょっと…その『犬』黙らせて。」
普段より低い「男性の声」に、私はビクッと体を震わせた。
怒ったの…?
アランは今まで見た事のない真剣な表情で、私を見つめていた。
『――犬ぅうぅッ!?お前にそんな…むぐぐぐ…』
コンちゃんの言葉が詰まる。
ハルカちゃんが私と繋いでいた手を離し、コンちゃんの口を押さえたのだ。
「ハルカちゃん!?」
私はアランに従うハルカちゃんの行動に驚いていた。
…何なの!?
なんで、いきなり…
「…奈央?言ってごらん?」
味方のいなくなった私は言葉を詰まらせて、アランを見上げた。

