記憶 ―惑星の黙示録―



ハルカちゃんも自分の事で精一杯の様で、


「…仕方ないな…」

そう呟くと、


「――…お兄ちゃ~ん!?助けてーッ!!」

と、何の躊躇いもなく叫ぶ。

すると、前を歩いていたアランがピタリと歩を止め、こちらへ引き返して来た。


「…今回は大分頑張ったねぇ、ハルカ。ほら…」

そう言いながら、ハルカちゃんへと手を伸ばす。

その手にハルカちゃんが触れると、フッとハルカちゃんの周囲の風が退いた。


「…え!?」

何、これも魔法とやら?

アランに触れていない私は、まだ強風に煽られたまま。
まるで別世界の様に、アランたちの周りは穏やかだった。


『…あぁ…だずがっだ…。』

脱力するコンちゃん。
ふぅ…と一つ息を吐いてから、ハルカちゃんは私に言う。


「…ナオちゃんもお兄ちゃんの手を取って?」

ほら…と、差し出すアランの手が目の前にある。
一瞬躊躇いながらも、状況が状況だけにすぐに私は手を伸ばした。

なのに…。
アランは、手をひょいと引っ込めた。


「――…は!?」

アランは楽しそうに、
こう言ったんだ。


「奈央も、俺に『助けて』って、言ってごらん?」

――…はぁ!?