記憶 ―惑星の黙示録―



吹き荒れる風の中へと歩を進めると、自然と叫びにも似た声が漏れる。

台風…なんてもんじゃない。


「…こ、…この強風の中っ!なんで!あの人スタスタ歩いてるのぉー!!?」

片手は、はぐれないようハルカちゃんと繋いだまま。
もう片手で暴走する自分の髪を押さえ、前に体重を掛けて苦労して歩く。


「…お兄ちゃん、慣れてるの~!前も同じ様な事あったから~!」

慣れてるって…


「…これって『慣れ』れるものか!?」

そう普段よりも騒がしかった私だけれど、それより騒がしい子がいた。


キャゥ!
『…ちょっとぉおぉッ!たくさんの風さんがッ!俺をユウカイしようとッ!そっか…、俺が可愛いから!?きゃあぁあ~ハルカぁ!!』

コンちゃん…。
あんた…、誘拐って…。

コンちゃんは、叫びながら必死にハルカちゃんのカバンに爪を立てていた。

私たちより断然小さな体では体重も軽く、必死にしがみついてはいるものの、すぐにでも飛ばされてしまいそうだ。


『――ハルカぁあぁ!俺がユウカイされてもいいのかッ!?寂しいだろッ?寂しいよなッ!?…だずげでーーッ!!』


言葉って、凄い。
この子の何を、昨日まで恐がっていたのか…。