記憶 ―惑星の黙示録―




その街では、
本当に魔法が生きていた。


街の名は、無い。

普通は付けるものだと思うんだけど…。


異世界へ移動する街。
妖精の世界?と行ったり来たりしている…らしい。


ここの住民のほとんどが妖精で、この世界の「洗礼」を受けていない者。

だからハルカちゃん同様、
私の心を読む事は出来ない。

そうアランに聞いて、
私はほっとして、穏やかに初めての街を楽しんでいた。


…「洗礼」、

それが、この世界でどうゆう事を指しているのか…、よく分からないんだけど。

わけの分からない事だらけで、
この場所に順応するのに手一杯なので、追々理解出来ればいいと思う…。



言葉なくうっとりと景色に惚ける私の腰を引き、アランは街の酒場へと案内した。

ギィ…と音をたてる大きな木の扉を開けると、
わっ…と人々の熱気と賑やかさに私たちは包まれていた。

幻想的で穏やかだった外との差に、思わず肩をすくめた位だ。


『あたしたち、上に居るから』

人々の騒がしさの中、
ハルカちゃんはそんな動作を残して、私たちを置いて階段を上って行ってしまった。

あの子は、お酒の飲めない未成年なのかもしれない。