記憶 ―惑星の黙示録―



なんか…あの人。

知ってる様な…
いや、知らない様な…


「…あれ?…そっか。ごめん、奈央は会うの初めてかも。紹介するね?」

愛里はそうソファーから立ち上がった。


え?紹介って?
そんなに改まる事も…

そう気まずい雰囲気を恐れるのは私だけの様で。

「あれー?初めてだっけ?」

梓さんと絵美は、
そう首を傾げ合っていた。


梓さんと絵美は、兄妹。
愛里と梓さんは恋人。

で、私たち三人は親友で…

いつも仲良しでお互いに知らない事はあまりないし、周りの事も何でも話していたから…

知っているのが当たり前で、それがとても居心地が良くて。
でも、たまに…

『あれ?知らなかったっけ?』
『言ってなかったっけ?』

こういう「落とし穴」が在るんだよね…。



「…この人は、梓の幼馴染みの 今野 新さん。」

愛里の紹介を受けて、その男性がペコリと頭を下げる。

うん、
やっぱり知らない人だよね?


「…で、この子が…」

愛里が続けざまに私を紹介しようとするが、


「愛里、知ってるから良いよ~?奈央でしょ?」

と、男はヘラッと笑った。

…は?
私、知らないし。

しかも、呼び捨て?