記憶 ―惑星の黙示録―



風の道はあの街の上空を越えると、ゆっくりと上へ上へ傾斜を強くしていった。

リュウさんの言う通り、
道は最初の崖へと続いていた。


それは、雲の上。
切り立った岩肌の頂上。

何もないはずのそこには、
闇夜に柔らかに輝く、大きな「扉」が待っていた。


「…これが、私が開ける扉…?」

地面に降り立ち、その大きな扉を私が見上げると…


「扉が大き過ぎて、折角の向こうの景色が見えないじゃんね~?」

そう手を繋いだアランが不満を漏らした。


…向こうの景色?

最初にここに居た時にぐるっと見渡したけど、
空と雲しか…無かったわよ?

そう首を傾げる私に、アランは得意気になって笑う。


「あの時は、ほら。昼が居たから見えなかったかもしれないけどさー?」

「…夜だと見えるの?」

はぁ…?
何が?星空とか?

さらに上空を見上げても、
ただ暗い黒い空。


「奈央に見せたくないのかな~?リュウってば、わざわざ大きな扉作っちゃってさー?」

チラチラと楽しそうに私に視線を送りながら、アランはそう言い出したんだ。


「…何?」