サァ…
柔らかな風が、
花畑を通り過ぎて…
橙色の花びらを揺らす。
その風は、
肉体の無い私の体をも、
抵抗無く…自然に通り過ぎた。
さっきから…
この人は、何を言っているの?
「……ごめんなさい、宗教はよく分からないの。勧誘なら他所でやって…?」
ふふふ…
私は急に可笑しくなって、
笑っていた。
そんな事、信じない。
でも実際に、
…風は私を通り抜けた。
やっぱり、
これは悪い夢なの。
『輪廻転生』…
そんな言葉を聞いた事はある。
それだと言うの?
「…輪廻転生か、奈央ちゃんの世界では、そう呼ばれているかもな…」
リュウさんは自分の頭を掻きながら、困った様に声のトーンを下げた。
「…人は転生する度に、前の世界での記憶は消される。勿論、ここでの記憶もな。しかし、潜在的に『魂』は少しだけ覚えているんだろうな?『自分』が訪れた世界を…」
リュウさんが…、
何を言いたいのかが分かってしまう自分が、嫌になった…
私の世界で、
『言い伝え』とされてきた事。
『架空世界』だと…
『人の想像した物』だとされてきた物…

