ワン!
『初めてこの世界来た時に、あの街で会ったんだよなッ!』
コンちゃんの言葉に、ハルカちゃんも首を縦に振る。
「そうなの…」
「…リュウお兄ちゃーんッ!!」
ハルカちゃんの声が、
風に運ばれて花畑を走る。
しかし、花畑は穏やかな表情のままだった。
私たちの他には誰一人としてこの場に居ないんじゃないか…
そう感じる程に静かな光景だった。
ワゥ?
『…お留守?』
「嘘でしょ。リュウお兄ちゃーん、居ないのー!?」
ハルカちゃんが呼ぶ声に、苛立ちが混じり始めていた。
――ザッ…
そう風が、
花畑が揺れて動いた。
「…んな、叫ばなくても…聞こえてるよ…」
花畑から身を起こしたのか、橙色の花たちから上半身だけをこちらに見せ、男が欠伸をしたのだ。
「リュウお兄ちゃん!」
「…ぇ…」
この人…!?
大欠伸をしながらボーッと気だるそうに頭に手をやる、がたいの良い男。
とてもじゃないけれど、助けてくれる相手には見えやしない。
「…あぁ、失礼。誘拐犯のお出ましか。」
男は、そう言った。

