草花が生い茂る、
黄緑色の小高い丘。

これを越えるべく、私たちは緩やかな坂道を歩いていた。
風も穏やかで、たまに草花の掠れて揺れる心地好い音。

虫や小鳥の囀りが聞こえて来ても良い状況なのに、私たち以外の「生きている気配」は感じられない。

静か…。
その静寂さの中で、

はぁ…はぁ…

と、私たちの息遣いだけが響いていた。


「…どうしてっ。こんなに…疲れるのっ…」

坂道は本当に緩やかで、そこまで長い距離があるわけでもない。
それなのに、足が重い。

確かに…、
最近は普段から車での移動が主で、歩く事すらあまり無い。
電車やバスですら面倒だと感じていた。
運動不足…?

でも、その答えだけでは済まされないはず。
ハルカちゃんやコンちゃんだって、同じ状況だったのだから。



「…はぁ、なんでだろ…。体…重い…!コン、大丈夫…?」

『――…ダメぇ。…づがれだぁ~!いやぁ~ん!』

パタパタと羽ばたくコンちゃんの翼も、不定期的に変速して動く。
大分、消耗している様で高度も上がったり下がったりを繰り返しながらも、地面に着いてしまいそうだった。