「……わざわざ
その子の手の所まで行って
取りやすいようにさ。

それなのに
俺を掴んだと
思ったや否や
叫び声あげながら
ブンブン振り回すから
このザマですよ。」

三つ又に分かれた指を
思い切り外に反らし
短い腕を天へ掲げる
様子を見て
白い歯を見せながら
おまわりさんは
笑っていたが
どうやら和傘は
本気で落ち込んで
いるようだった。

まぁ誰だって
へこむわな。
ましてや嫌がられるなんて。

窓の外は雨足を強め
軒下を雨樋から伝ってきた
水が音をたてて
流れ出ていた。

新緑とした草葉も
豊穣とさせる早苗も
恵みの穀雨が命を吹き込む。

……暦の上ではもう夏か。