オバケの駐在所

「そして3日は
……もぐもぐ……
外に出ないことだ。
死にたくなければ
言うとおりに
……むぐむぐ……
しておけばいい」

これを人が聞いて
なんていうだろう。

営業職についてるとはいえ、
少なくとも今の俺は
こんな常識のないことを
素直に聞けるはずがなかった。

「あなた……
本当に警察の人なの?
……交番をこんなにして。
オバケって……なんなのよ。
どんなトリックを使ったのか
知らないけどさ」

散乱した窓ガラスを
踏みながら、
すました顔をなんとか
保っている感じだった。

小百合の細い肩が
さらに縮こまって見える。

これがイタズラだとしたら、
もはや愚行だ。

「イタズラでも
トリックでもない。
オバケは人が見る可視光とは
まったく関係ないし、
比重もあって
ないようなものだからな。
ああ、割れた
窓ガラスのことなら
気にしなくていいよ。
勝手に直るからね。
それよりこれ
書いてくれないか?」

『被害届』

机のブックエンドに
適当に挟まれた
その紙きれを取って
よこしてみせた。

「もしかして……
オバケの被害状況でも
書けってことかな?」

「……このお巡りさんなら
あり得るわね」

耳語をうつ俺らを尻目に、
男は人魂らしき
光の集合体と
じゃれはじめた。

コロイド状で
なんだかそれは
ドライアイスの煙みたいにも
見える。