しゃがみながら
黙々と乱脈に
何か打ち続けるその人。

その所作と言うと
人気のないこの時間、
とても不気味に思える。

……もうっ。
こんなに桜が綺麗なのに。

私はなるべく
近寄らないように
車道へ降り
ガードレールを挟む形で
距離を取って
道の真ん中を通る事にした。

すると、
歩道から見た時とは
また違う
街灯に照らされた花。

峰の様に連なり
灯籠の様な妖しげな
光を返すその姿に、
私はうっとりと
目を奪われる。

はあっ、
故郷も東京も変わらんよ。
どんなに栄えようと
自然には適わんね。

……あれ?

見渡せば背の高い桜ばかり。
その間に挟まれて
遠慮がちに立っている
一回り小さな桜の木が
ふと目に入る。

その根元でしゃがみながら
何か作業をしていた
先ほどのお婆さんは
気がつき目を戻すと
そこに立っていた。

こっちを向いて……。