今日は会えるかな?

そう思って
俺は空を見上げる。

空にはぼんやりとした雲が
うっすらと見えるだけだ。

その子は
恥ずかしがり屋なんだって
誰かが言っていた。

なかなか会えないって。

俺は昨日からもう何度も
見上げてるけど、
夜が寒くなったなぁと
思うばかりで
その子は一向に現れない。

……また明日見てみよう。

そう思って俺はだんだんと
白くなってきた息を、
自分の白い手へ
そっと吐きかけた。


――宵は晩秋の落ち葉が
風に舞う頃。

山梨県の甲府、
昇仙峡に住んでいる天狗が
冷え込んだ山々に
活気をつけたいと
各地方々に御触れを布いた。

相撲をとって
1番優秀だった者に
褒美をつかわすという事。

褒美の懸賞は誰もがうなる
極上の美酒。……だそうで。