私は窓に書いた
相合い傘にハジメの文字と
なつみの文字を入れた。
そして傘には
蛇の目模様に長いベロ。

ためらいがちに
端に書いた
小さな落書きだが
生まれて初めての
いたずら。
これからの事を考えると
胸がちょっとだけ
ワクワクしてきた。

窓から空を眺めるだけの
仕事はもう終わり。

次は何をしてみよう……。

そして私は
名残惜しさを傍らに
窓を開けて
外の世界へ旅立つ。

しとしと降り続く
五月雨は
ツツジを濡らし
春を終えて
明日には
止んでしまうだろう。

だが私の心の中では
いつでも雨音が
聞こえてきそうだ。

故郷を忘れないために。