そして優しい嘘を言葉に

「……何があった?」

押し殺すような低い声。



回りに人が居ないのに、こんな声で訊くって言う事は……心配してくれてるんだ。

と言う事は、やっぱり、泣いてたのがバレてるんだ。



私は辺りを見回して、誰も居ないのを確認してから、涼を見て言った。



「後で……家に行ってから話す。あの……相談、したい事もあるし……」



元々、今日はバレンタインデーなので、帰りに寄る予定だった。

涼が、眉間にシワを寄せた。



「でも」

そう言い掛けてから、涼はちょっと視線を変えると、急に黙った。



ん?

私が涼の視線の方を見ようとしたら、自転車が近付いて来る音がした。