そして優しい嘘を言葉に

「あっ、沖野先生、おはようございます」

今気が付いたフリをして、挨拶をした。



「おはよう。今日も走って来たのか?」

そう言う声が、私に近付いて来るのが分かった。



今はダメ。



「ちょっと今日はハイペースで走って来て、汗だくなんですよ……じゃぁ、顔洗ってから体育館に行きますね」

私はそう言いながら両手でタオルを持ち、顔をゴシゴシと拭いて小走りでその場を離れようとした。



その時。



ガシッ

急に右手首を掴まれ、引っ張られると、タオルが地面に落ちた。



えっ?

思わず手首を掴んでいる人の方を見ると……涼。