そして優しい嘘を言葉に

「歌のプレゼント、すごく嬉しい」



私の返事で、涼は優しく微笑んだ。



「では、お客様、イスへお掛け下さいませ」

涼は片手を前へ出して、座るように促した。



私がイスへ座ると、涼もステージの上のイスに座った。

一瞬、涼は私の顔を見て微笑んでから、手元のギターへ視線を変えた。

そして、ギターの音色が聞こえ始まった。



あっ！

この曲……文化祭の時、先生方が歌ったヒット曲。



私は涼の歌声を聞いて、文化祭の時の気持ちを思い出していた。



『涼、カッコイイ』……そう思ったんだ、あの時。

でも。



他の女子からも、『沖野先生、カッコイイ』って声援が飛んでいて……涼の事を本気で好きになっちゃう生徒が居るんじゃないか、って複雑な気持ちになった。