そして優しい嘘を言葉に

先輩の陰になって、声の主は見えない。

でも、分かる。

章弘先輩がクルッと声の主の方へ振り返ると、私にも姿が見えた。



……涼……。



ちょうど体育館の端と端に居るので、少し距離があったけど、涼はゆっくりと私達に近付いて来た。



涼……怒ってる?

章弘先輩が私達の事に気が付いているのを知らないから、涼は怒りたいのを我慢しているようだった。



ちょっとの間、涼の方を見ていた先輩が、急に私の方を再び見て、ナイショ話をするように私の耳元に顔を近付けて小声で言った。



「美雪、ありがとうな。お幸せに」

章弘先輩はニッコリ笑って、私の頭の上を1回ポンと叩いてから、涼の方に歩いて行った。