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【オフィスビル26階 屋上】
その日の夜の事だった。修が一馬に予告を出してくれと頼んだのは
予告とは勿論、裁きに行く人物と時間をネットに書きこむ事。それは光の速さで瞬く間に人々に伝わるだろう
今回のターゲットは某体育学校の教師。過去に何度も生徒に体罰を与えていて、それは主にバスケ部員に向けられた
レギュラーである生徒達は指導と言う名の体罰に日々苦しんでいる
前回、前々回と裁きを遂行出来ていない修は、今度こそ予告を出せば引き返せない
戦士を待ってる人は大勢いる。これを機に再び信者は増えるだろう
夜の屋上で一馬はパソコンの手を止める。今まで修の言う事、修のやる事に口を出した事はない
------------でも。
『………………僕には出来ません』
一馬は静かにパソコンを閉じた。書き込めないのは自分の為じゃなく修の為
『…………それなら予告なしで行くよ。そもそもそんなものは必要ないしな』
ギャラリーは多い方が盛り上がる。そう高木功が言ったのが予告の始まり
------------ガタンッ。
一馬は修の言葉を聞いて立ち上がった
『これが修さんの答えですか?』
意見を強要する気も押し付ける気もない
修の意思は修のもの。考えて決めたのなら何も言う事はない
『何が正しくて何が悪いのか僕には分かりません。戦士を正義と言う人も居れば人殺しと言う人も居る。僕達を必要としている人は確かにいる。でも……………』
『…………』
『そんな迷いのある顔で行くつもりですか?この答えは本当にあなたの意思ですか?』
いつも自分達は正しいと思ってやってきた。心を無にして世の中の為に人を殺めても何とも思わなかった
だけど今は違う。迷いのある裁きは救済ではなく本当にただの人殺しになってしまう
『例えそうでも、ここに存在し続ける為にはやらなくきゃいけない』
修はスッと白い仮面を手に取った
『功さんの為に再び自分を殺すんですか?』
一馬の声が屋上に響く
『…………殺す?』
『そうでしょ?自分の心を殺して、自分の意思に背(そむ)く。……………修さん、あなたを縛るものはもうない。あるのは縛ろうとする自分の手です』
何も言わない修に、一馬は最後のお願いをした。これで駄目ならもう修を説得するのは無理だろう
『--------お願いします、修さん。もう一度自分の心と向き合って下さい』



