Iの漂流戦士






ネットや週刊誌、みんなが口に出す話題はこの話ばかりだ。おかげで高木功の本は再び売れ始めた


高木功だけではなくその母親、そして故人である修の顔写真まで出回る騒ぎ。まさに殺人鬼騒動並の社会現象となった




『高木君も修君も未成年ですよ。個人情報保護法はどうなってるんですか!?』



北徳春高等学校の非常階段。正義はその頃、携帯片手に声を荒げていた


『俺にキレんなって。こっちも色々やってるけど、みんな面白がって収拾(しゅうしゅう)が付かねぇ』


電話の相手は倉木。正義は押さえきれない苛つきを倉木に当てていた

学校の教員や生徒達も口を開けばこの話題で、事情を知っている正義にとって苦痛でしかない


『修君の住んでた住所から顔写真まで。昨日は命を絶ったビルの場所まで週刊誌に書かれてましたよ。どう考えたっておかしすぎです』


確かに修がした事は事情はどうあれニュースとして取り上げられるのは分かる。でも一年前の事件をこんな風に記事にするのは非常識だ



『弟の高木功が有名人じゃなきゃこんな騒ぎにはなってねーよ。ベストセラーの著作の知られざる真実、そりゃ話題の種にもなる』


倉木は意外にも冷静で、逆に正義にはそれが理解出来なかった


『どうしてそんなに落ち着いていられるんですか?』


正義はこの話が世に出てから、どこにいても心が落ち着かない。やっとみんなの事が理解出来て殺人鬼という存在も薄れていたというのに



『俺達が騒いでも仕方ねーだろ。こっちも修が通ってた高校だってバレて連日、記者がうようよしてやがる』


『……高木君の方はどうなってるんですか?』

『騒動が収まるまでは自宅待機らしい。学校側も初めて聞いた話だし動揺してるんだろうな』



成績優秀で学校の鏡だった高木功。まさか一年前の事件と関わりがあったなんて夢にも思わなかっただろう



『俺の気掛かりは高木より修だよ』

電話の向こう側で倉木が溜め息をつく


『思い出したくない過去をえぐられるだけじゃなく、弟が人殺しの自分と兄弟だとバレたからな。きっとその方が修にとってはショックだよ。巻き込みたくないって思ってただろうしな』