【同時刻 入沼中学 屋上】
夜空に浮かぶ満月が一馬の顔を照らし出す
誰も居ない深夜の学校で一馬が思う事は一つ
自分が自ら命を経ったこの場所で、あの日の事を思い出していた
『……星野さん。僕の14年間の人生を聞いてくれますか?』
数時間前に、正義にこの屋上で全てを打ち明けた
それに迷いはなく、むしろ迷う暇さえないぐらい
淡々と一馬は話し続けた
話し終わった後で、一馬の心は少し軽くなったけど正義の顔を見てその感情は別のものへと変わった
ボロボロと涙を流す正義を見て、こんな先生が居たらと心底思った
その気持ちは数時間経った今も変わってない
命を経てば違う世界へ行けると思った
ここから飛び降りれば、もう苦しい思いはしなくていいと思った
---------でも、それは違った。
例え自分という存在が世界から消えたとしても
心はまだこの世界に居たかったと叫んでる
だからきっと“未練”がある人間は行くべき場所に行けないんだと思う
『……僕の未練は…………』
漆黒の夜空の下で、一馬がポツリと呟いた
その言葉の続きが出る事はなかったけど、
胸に詰まっている未練がなくなる日までそう遠くないのかもしれない



