【東和市 岼根町】
足の踏み場もない部屋に転がり落ちている缶ビール
暫く窓を開けていないのか、異臭のようなものも漂っている
『………くそっ、これだけかよ』
そんな部屋の中で修の父親は、不機嫌そうにしていた
加(くわ)えタバコからは灰がボロボロと落ちて、煙は換気のしてない部屋の空気と同化している
もはや人の住める環境ではないこの場所に1人の人物がやって来た
--------ガラッ
それは無表情の修
父親の手には数枚の札と小銭
そしてその近くには見覚えのある紙袋が置いてあった
数日前にはあったはずの中身がない
『……………売ったのか?』
修は静かに問いかけた
父親は札をひらひらと揺らしながら、平然と言った
『たったの12300円にしかならなかったよ』
父親はそのお金を乱暴に床に置いた
修はそれをただ黙って見つめている
----12300円
修が大切にしていた母親との思い出
このお金にどれほどの価値があるのだろう
修にはゴミのように見える
『…なぁ、俺言わなかったけ………?』
まるでうわごとのように修が呟いた



