【東和市岼根町 枝波家】
『ねぇ昨日の夜、偶然修くんに会ったよ』
修と高木功がそんな会話をしていた同時刻。物が散乱している部屋の中、窓も開けてない室内はタバコの煙が充満していた
『………だから?』
修の父親は女との行為を終えて、布団の上にあぐらをかいている
『なんかお母さんの話したら怒られちゃった』
慰めてと言わんばかりに、女は裸の父親の背に抱きついた
『あーあいつマザコンだから。あの歳になってもまだ死んだ母親の姿を探してんだよ』
この家は仏壇どころか、母親の遺影すら見当たらない
『ふーん。でも、修くんをいつまでも子供だと思わない方がいいんじゃない?』
女は父親が口に加えているタバコを奪い取った
『あ?』
不機嫌にギロリと睨むと、女はそのタバコを自分の口に加える
『……あの目、多分本気だよ』
『は?なんだそれ』
女はそれ以上、父親に何も言わなかった
でも確かに昨日の修の目は何か恐怖を感じるものがあった
次言ったら…………
“殺す”
そんな死神のような囁(ささや)きが女にははっきりと聞こえたのだから



