『そう、あたし頭おかしいの。同じ男と三回以上ヤれないし、すぐ飽きちゃう』
修の顔に女の長い髪がかかった
---ドクン、ドクン……と嫌な鼓動が修の体を支配する
逃げなきゃ、
早くここから逃げなきゃ
修の頭の中で何度も繰り返し、同じ単語が飛び交う
『だから、ねぇ………?
修君私と遊んでくれる?』
その瞬間、修の視界が暗くなった
同時に唇に今まで感じた事のない感触
『…………ッ』
--ドクン、ドクン、ドクン
一方的に修は唇を奪われ、次にパチンパチンと変な音がした
それは修のワイシャツのボタンを外す音
女はまるで飢(う)えた動物のようだった
『…………やめろッッ!!』
修は女を思いっきり突飛ばした
ガシャンと机に置いてあった物が床に落ちる
その隙に修は急いで部屋を出た
玄関のドアを開けると、微かに背後で声が聞こえた
『修くん。次は絶対遊んでね』
散乱している部屋の片隅で、女が修に手を振っている
やっぱりあの女はおかしい
修は無我夢中で家を飛び出した
走って、走って、走り続けた
----あの家には帰れない
もう帰りたくない
遠退いていく自分の家を、修は一度も見る事はなかった



