一馬は倉木の手の中にある辞表を見つめ、ため息をこぼす
『あなたは本当に何も分かってないんですね』
一馬の頬は高木功に殴られたせいで赤く腫れていた
その腫れた顔でも、倉木に対して呆れているのがよく分かる
『………俺が分かってない?』
倉木の表情が一気に曇る
正直、倉木と一馬は直接面識がある訳ではないし
こうして二人きりで話すのは初めてかもしれない
二人の関係はあくまで、修を挟んで成り立つものであり互いに無関係に等しかった
倉木は今まで修の事を考えなかった日はないし、忘れた事もない
それなのに、いきなり出てきて何も分かってないと言われたのだから
倉木も黙っている訳にはいかない
そんな倉木とは逆に一馬は至(いた)って冷静だった
『そんな事をしても、修さんを余計に苦しめるだけですよ』
そう言って辞表の紙を指さした
倉木はギュッと唇を噛みしめ、一馬を睨み付けた
『そんな事お前に言われる筋合いはない』
これは倉木の決意であり、自分なりのけじめ
倉木だってこれで修への後悔が消えるなんて思ってない



