【同時刻 オフィスビル26階
屋上】
修は昨日から手すりの向こう側に座り、ずっと殿の町並みを眺めている
そんな中、ふっと屋上に居るある人物に問いかけた
『それ、どうしたんだ?』
目線は違う方向を見ているのに、すぐその変化を言い当てた
『すごいね。兄さんは背中にも目があるみたいだ』
修を兄さんと呼ぶ人物は一人しか居ない
『今朝同じ奴を見たからな。それで俺はそいつにも今と同じ質問をしたよ』
わざとらしく言う修に、高木功はクスリと笑った
『へぇ、その人はなんて?』
その人の事を思い浮かべ修は背を向けたまま言った
『転んだって言ってたよ』
それを聞いた高木功は、腫れている頬に手を当てた
そして、
『………俺も同じ理由だよ』
一馬と高木功
互いに殴りあった昨夜。案の定、頬は腫れて痛々しい姿になっている
修はおかしいと思いながらもそれ以上深く聞かなかった
それは頭の中が別の事でいっぱいだったから
『………兄さん……』
そんな修の背中を見て、高木功が呟いた
その声は修の耳には入らない
修はこの日、高木功の方を振り返る事はなかった



