『なぁ、岡吉って頭いいんだろ?勉強教えてくんない?』

席替えをした教室で、岡吉の前の席になった横川直輝


友達が多くクラスのムードメーカーの横川は、いつも一人で居た岡吉に話しかけた


『え……』と戸惑う岡吉に横川はニコリと笑う


『これから前後の席なんだから仲良くしようぜ』

横川はそれから毎日のように岡吉に話しかけた

初めは挨拶、次は用事、

横川の姿を見た他の生徒も岡吉に話しかけるようになり、岡吉は一人で居る事がなくなった


しかし岡吉にとって、それは嬉しい事ではない


岡吉は人に合わせたり団体行動が苦手でその上、多汗症だった


誰かと喋ったり緊張したりすると汗が止まらなくなり、目の前がチカチカして目眩がしたりする

だから岡吉は昔から人とは群れず、何でも一人で過ごしていた


しかしそれは寂しいのではなく、自分なりの快適な時間


勉強するのも好きだし、本を読むのも好き

そんな一人の時間が悪意のない横川によって、なくなってしまった


それは学校でも、学校以外でも