正義の体が一瞬止まった
(漂流……戦士?)
話題になっている本を隼人が知っているのは、何にもおかしい事ではない
---しかしなぜ今………?
『……知ってるけど……』
正義は小さな声で答えた
思えば漂流戦士から全てが始まった
あの本と出会い、正義は裏の世界に足を踏み入れた
殺人鬼の謎を知りたい為に
『漂流戦士の内容、少し俺の境遇と似てると思いませんか?』
隼人の言葉に、正義は考えるように止まった
漂流戦士を何度も読み返した正義にとって、内容はほとんど頭に入っている
酒ばかり飲み働かない父親や、幼い頃に母親を無くした事、
そして父親は女を毎日のように家に連れ込み、居場所が無くなった少年は夜の町を漂流するという内容
隼人の言う通り、確かに似ている所があった
『俺…あの本を読んで、自分と同じ人が居るんだと思いました。それで…気になって調べたんです。著者の少年を』
著者の少年、それは勿論高木功の事だった
漂流戦士は実体験を元にしたフィクション、高木功が体験した話
『……でもやっぱり小説は小説でした。実体験を元にしたと言っても所詮ほとんどがフィクションだったみたいです』
(ほとんどがフィクション……?)