Iの漂流戦士






暗闇と微かな明かりに照らされた顔

高木功とは真逆の雰囲気だが、その瞳の奥には似たものを感じた


なんでも見透かされているような真の通った強い目。修は座っていた腰を上げ、立ち上がった


月明かりを浴びて、堂々と立つ姿に正義は釘付けになっていた




『なぁ、先生って今まで人を憎んだ事ないだろ?』


仮面を外した修の表情は、正義の目でもはっきりと読み取れる

修はその質問に付け加えるように、淡々と言い続けた



『憎くて、悔しくて、苦しくて、こいつさえ居なければって思った事ない?』


『…………』



『傷ついて、傷つけられて、死んだ方が楽だと思った事は?』



『…………』



『明日を生きる事よりも、明日死ぬ事に希望を感じた事はある?
………ないだろ?先生』


修は一呼吸置き、正義をじっと見つめた

正義は何の返答も出来ないまま、ただその場に立ち尽くすしかなかった


正義の答えはたったの一言


“ない”

そのたった一言が修と正義の大きな違いだった



『なぁ…先生、世の中にはそんな気持ちを抱えて必死に生きてる奴が居る。そいつらを苦しめた人間を殺してあげる事が俺達の“正義”だ』


“正義”

皮肉にも同じ名前をもつ正義(ただよし)、

昔から正義感の強い人間になりなさいと親から言われていた


そして教師という職に就き、その名の通り正義感を忘れずにやってきたつもりだった

それなのに修が言う“正義”と

正義が思う“正義”はまるで別物だった