そんな切ない想いを隠して高木功は笑う
『ねぇ…ナノハちゃん。たまには逆らってみよっか』
『…………?』
『兄さんに』
高木功とナノハにとって修の言う事は絶対だった
。それは修の事が怖い訳ではない
修の言う事が全て正しいから
だけど今日だけは、
今だけは逆らってみたくなった
高木功はナノハの腕を掴み、殿町の街を駆け抜ける
『きゃっなんなの』
『おい!ぶつかったら謝れ!!』
人混みを走る二人に罵声がかかる
ナノハはただ腕を引っ張られ続けキョトンとしていた
走る度にセーラー服のスカートがヒラヒラと舞い上がる
『……功?どこ行くの?』
高木功は走りながら『ナノハちゃんが行きたい所』と言った
駅からはどんどん離れていき、ナノハが行きたいと言ったあの場所へと向かう
そんな中、二人はオフィスビル26階の真下に差し掛かった
チラッとナノハは屋上に目を向けている
高木功はあえて見ようとしなかった
『修……』
ナノハの言葉に高木功の走るスピードが早くなる
修はそんな二人の様子を勿論、屋上から見ていた
走り去っていく二人の背中を目で追い、一馬に問いかける
『なぁ、俺たまにさ…功が何を考えてるのか分からない時があるんだ』
一馬はパソコンを見つめ、平然と答えた
『僕には分かる時なんてありませんけどね』
修は二人の姿が見えなくなった後も街をじーと見ていた
『気になるなら行ってくればいいじゃないですか』
ずっとパソコンと向き合ってるのに一馬はいつだってお見通しだ
『そこまで過保護になる気はねーよ』
修の笑いに一馬は少しだけ疑問に感じていた
もっと気にしてると思いきや、修は案外平然としていたからだ
『修さんって…けっこう残酷ですよね』
『はは、残酷ってなんだよ?』
『だって皆の事を平等に見てるから』
一馬の言葉に修はフンッと鼻で笑った
修にとって功もナノハも一馬も皆同じように大切だった
その気持ちに大きいも小さいもなく、三人共平等に大切
それは決して悪い事じゃないけれど、
修の事を特別に思ってる人間にとっては残酷だ
だって、どうしたって一番になる事はないのだから



