それから何とか午前中の授業を乗り切り、やっと昼飯の時間になった。

今日は絶対冷やしたぬきを食べると決めている。
なんとなくそんな気分だ。


『まるは今日何すんの?』


食堂に行くと人が溢れていて、最早戦場に近い。


この場合、先輩、後輩は関係なく早く目当てのものを買おうとみんな必死だ。


『冷やし中華がいいけど、もう売り切れてそう。
うーん、どうしようかな』

俺達も人混みの中に入ったけど、なかなか前に進めないし押されるし最悪。


俺がふっと横を見る小さな女子生徒が埋もれていた。この場合、背の低い人は不利。


『………ってか、千花?』


『…………う…あれ、……宮澤君』


やっぱり埋もれていた生徒は千花だった。

俺はほぼ学食だけど食堂で千花を見かけた事はない。女子はお弁当を持ってくる人が多いみたいだし。



『千花が学食って珍しくない?』


俺は頭が出てるから喋れるけど千花はなんか苦しそう。



『………今日、持ってくるの忘れちゃって……』


千花は普段利用してないからメニューも分かってないし、人を押し退ける図々しさがない。

こんなんじゃ絶対買えないけど。



『俺に任せてくれるなら買ってきてあげるよ。
どうせ俺もついでに買うし』


『……え、でも……………』



『いいよ。埋もれすぎて顔赤いし。食堂の前で待ってて』



千花は限界だったのか俺に甘えて戦線離脱した。