悠里は体を密着させて長い指で俺の頬を触った。
『ここでしちゃいます?』
校舎の陰、死角、二人きり。
多分これさえ揃ってれば充分だ。
『………本当さ…悪い女だよね』
悠里はむかつくぐらい小悪魔で、誘われる度にいじめたくなる。行為中の悠里はほとんど受け身で、甘い声をもらして何度もキスをせがむのが癖。
『本当悪い女。だって俺がやらないって分かってて誘ってんでしょ?』
俺の言葉に悠里は微笑んで密着させていた体をすぐに離した。
『あ、バレました?本当は理性が崩れるところ見たかったんですけどね』
『……』
きっと以前の俺なら思惑通り乗っていた。何の目的かは知らないけど悠里はただ楽しんでるだけだ。まじで恐い女。
『先輩の頼みなら豊津先輩の事誘惑してあげましょうか?』
遠回しに協力してあげてもいいと言うニュアンス。あーぁ、なんで色々バレてんだろうな。
明日香といい悠里といい、女は鋭すぎる。
『と言っても豊津先輩は乗ってこないでしょうね。先輩と違って彼女の事大切に想ってるみたいだし』
『……』
『こういうの自業自得って言うらしいですよ』
『お前が言うな』
『はは、私は自覚してるから大丈夫です。私達みたいなタイプっていい思いをした分、いつか地獄に落ちるんですよ』
……………そんなの分かってる。
そもそも俺に千花を想う資格はない。
あの二人を別れさせるつもりもないし邪魔もしたくない。そう頭では分かっているけど俺は……………
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