明日香の弁当箱は小さくて、中身もヘルシーな物しか入っていない。こんなんでよく腹いっぱいになるよなって思う。
『顔の傷治ったね』
ぎゃーぎゃーと増田達が騒ぐ中、明日香が俺の顔を見た。
『だから言ったろ。大した事ないって』
あんな傷、痕に残るほどじゃない。けっこう殴られたけどあれは人数が多かっただけで強くはなかったから。
『それにバットで殴られた増田見てみろよ。
あんなに走り回ってるじゃん』
『はは、そうだね』
明日香がまだなんとなく俺達に気を使ってるのは分かる。だからまるも増田もあの事件の事は言わないし。
『私ね、ちゃんと相手の事知ってから好きになったり、付き合ったりするって決めたんだ』
『……』
『やっぱりその人がどんな人か分からないし、
もうあんな目に遭うのは嫌だしね』
『………ふーん』
今までそんな事言わなかった明日香がそう思うって事は、やっぱりかなり怖かったんだと思う。
『……あの時、みやが見つけてくれなかったら私
あいつらにひどい事されてたよ。だから改めてありがとね』
明日香はニコリと笑い、食べかけの弁当を食べた。
それを聞いて心に何か引っ掛かった。
『俺はお前が思ってるような奴じゃねーよ』