君はガラスの靴を置いていく






『先生ー、急に腹痛くなった』

なんて、見え見えの嘘を付きながら保健室のドアを開けた。でもそこに先生は居ない。

俺は勝手に空いているベッドに横たわった。


『はぁ………』

何故かため息が出る。

それはうるさい噂話のせいなのか、
それとも…………………。




『---------------先輩』


誰も居ないはずの保健室で人の声。それと同時に隣のベッドで布団が動いた。


『先輩もサボりですか?奇遇ですね』

『………つーか居たの?』

それは間違いなく悠里だった。声をかけられるまで全然気付かなかった。


『私、保健室で寝る時は頭まで布団かけちゃうんですよね。だって知らない間に寝顔とか見られてたら嫌じゃないですか』


なんで気分が晴れない時にこいつに会っちゃうかな。俺は言葉も返さず、悠里に背を向けた。


『あら、今日は冷たいんですね』

『………』

すると俺の周りのカーテンが閉められ、
ベッドが僅かに沈む。


『狭いからあっち行け』

振り向かなくても分かる。

悠里は背中越しの俺のベッドに座っていた。


『先輩彼女と別れたんですね。
もしかして私との事がバレちゃいました?』


『俺がそんなヘマする訳ねーだろ』


何故か悠里には素が出せる。だっていくら冷たくしても突き放しても悠里は動じないから。

そんな神経が図太い女は楽だ。
気を使わなくていい。